社長(あきらさん)インタビュー

お客様が努力をしない、楽しむだけのお店を

――23歳で初めて起業され、さまざまなご経験をされた後、1993年にハートマーケットを創業されました。昔から起業したいという思いがあったのでしょうか。

自由に自分のやりたいことをしたいと思っていただけで、起業や社長になることへのこだわりはなかった。社内で、社長ではなく「あきらさん」と呼ばれているのもその表れだと思う。アパレルの起業は2度失敗していて、どちらも出資者のオーナーと反りが合わなくて辞めてしまった。自分で出資していたお金も信用も失って、人生で初めて無職になった。

その頃に住んでいたアパートの明かり窓を見ていたら、ふと「ハートマーケット」というフレーズが降りてきた。直訳すれば「心の市場」。その言葉がコンセプトになった。それまでのブランドはお客様よりブランド目線の発信で、上層部だけが儲けているような状況。そんな世の中に、お客様の笑顔のためだけにある洋服店が一軒ぐらいあってもいいんじゃないかと思ったのが始まりだった。

でも、当時は友人に「心だの絆だの情だのいっていると、お前やばいよ、潰れちゃうぞ」といわれる時代だった。その後バブルがはじけて、リーマンショックがあって、震災があって。バブル以降の失われた20年の間に、世界中が「心って大切だよね」といい始めて、うちも「ハートマーケットっていいね」といわれるようになってきた。

――レディース・アパレルを選ばれた理由は?

当時はレディースだけのブランドがなくて、直感的にレディースだけに絞ったほうがいいと思った。男性ってどこかブランド頼りだけど、女性はあまりブランドを意識せず、洋服そのものを偏見なく見てくれる。そこに生きる場所を感じたのかもしれないね。

――ハートマーケットは、ノーエイジ、ノージャンルを掲げていますね。

僕らはお客様にとってのアメーバみたいな存在で、お客様が言葉にされないニーズにお応えすることを一番のテーマにしている。だから、僕たちがジャンルなんて作ってはいけないし、エイジなんて作ってはいけない。お客様が作り上げられたジャンルをうちが具現化して発表していたら、どこにも似ていないお店ができた。世の中で初めての「心の市場」、お客様が努力をしない、楽しむだけのお店を作るというテーマでやってきた結果なので、時代によって変化もする。でも、それが常にハートマーケットなんだよね。

会社とは自分自身。そこに気づいてもらいたい

――ハートマーケットはクレド(信念)で「世界一笑顔に溢れ 世界一多くのありがとうを集めるお店を創ります」を掲げていますね。

ハートマーケットが6年間順調に伸びていた矢先に大きな赤字が出た。必死で資金繰りをして再起動しようとしたけれど、みんなの夢が散乱していて、ひとつの夢に向かえていなかった。だから、みんながよりどころにできる大切なものとしてクレドを作った。世界一笑顔に溢れた世界一ありがとうを集めていくお店にするためには、自分たちもそうだけれど、まずはお客様。今は、お客様に笑顔になっていただくために、日本一の品質の商品を作る「スマイルプロジェクト」を打ち出している。

――日本一の品質の商品を、お客様が買いやすい価格で提供していくには、取引先も巻き込んでのプロジェクトになりますね。

以前は、複数の取引先のメーカーさんと、それぞれに交渉していて、それでは足並みが揃わなかった。今は、メーカー全社の集まる会議を月1回行って、高品質の商品を作るという意識をひとつにしている。2015年には、メーカーさんによるクレドもできた。

――オープンカンパニーを表明されているとおり、社内外で情報共有が盛んで取引先間や部署間の垣根がないですね。社内では役職も作らないと聞きました。

やりたいことをやるためには、オープンにするほうがよかった。会社運営として理想的に過ぎるともいわれるけれど、大変なことでもない。ある時、社員たちと「会社とは何?」というテーマで話をしたら、「自分自身」という結論に至った。人のためにならがんばれるという人がいるけれど、それは嘘だと思う。まず自分のためにがんばれて、自分を愛せなければ、人なんて愛せないでしょ。そう考えれば、自分のやることが大切になってくる。そこに気づいてもらいたい。

――社長は、毎朝晩に「キラキラメール」を全スタッフ向けに配信されていますね。朝は「今日も楽しくキラキラ行きましょう」というポジティブな内容と、スタッフに考えることを促す「学びのテーマ」が出されます。

最初はスタッフの業務を知るために、スタッフから一日のスケジュールを連絡させていた。でも、自分だけ何もしないことに疑問を感じて、みんなで幸せになろうという気持ちから、キラキラメールを送るようになった。朝から束縛されるのを嫌うスタッフや、学ぶことが嫌いなスタッフは辞めていき、今は積極的に学ぼうとするスタッフたちが残っている。いい仕組みになっていると思う。

数年後に自社工場を作り、将来は前橋を学ぶシティに

――社長は読書家で、ご自身が感銘を受けた本は、スタッフにも共有されるそうですね。

本をたくさん読み、常に勉強することで、自分が幸せになったから。情報を血肉にすればインテリジェンスになり、それが自由を生み出し、幸せを生み出す。幸せになるには学ぶことしかない。思考は現実化するから、ああなりたいと思うと、そこに出会いがある。思いを持って本屋に行くと、必要な本が目の前に現れるんだよ。

――採用面接では、面接に来た方全員に「私が一番受けたいココロの授業」という本を渡すそうですね。

不幸な面接をして人の時間を奪っちゃいけないからね。幸せな面接じゃないと。その本には、能力があろうが心のない人や挨拶のできない人はダメだと、シンプルなことが書いてある。そのことに賛同できないとハートマーケットの仲間にはなれない。だから、入社前に読んで感想文を書いてもらうことで、離職率が減るんじゃないかと感じて始めた。

――今後、店舗を3倍にしていくという目標があるそうですが、事業拡大にあたってどんなことをしていきたいですか?

メーカーさんとの良い協業関係をさらに推し進めること。なおかつ自社工場を作り、生地作成から縫製、販売までを一貫して行いたい。そこで経験したものをメーカーさんと共有して、また次に何ができるのかを楽しみにしている。

――ママ・インターンシップなど女性の働きやすさの向上や地域活性化など企業として影響力も大きくなってきた中で、今後社会の一員として取り組んでいきたいことは?

20代の頃は会社が社会貢献するものだということはわからなかったけれど、50歳を超えた今は自分がやっていることが世界平和までつながっていくことを感じている。スタッフとのコミュニケーション、夢、お客様に対してのアプローチもそう。おこがましいかもしれないけれど、そういうふうに理解できるようになった。

テロや貧困などの問題も、学ぶことで解決すると思っている。僕自身、お金や正しい職場を持ち、素晴らしい未来を感じられるのは、すべて学んだおかげ。ママ・インターンシップで出会ったスタッフも一緒に学んで楽しそうだし、お子さんたちがハートマーケットに勤めたいともいってくれている。それを発展させて、ゆくゆくはこの前橋を学ぶシティにしたい。市長や教育委員、議員にも、学ぶ始まりを前橋に作り、全国に広げていきましょうと訴えている。

MESSAGE

ハートマーケットでの私たちの仕事は「売る」ことでも「買ってもらう」ことでもなく、来ていただいた全てのお客様に「楽しんでもらう」こと、「喜んでもらう」こと。そのためには、まずは私たちが仕事や人生を楽しむことが大切です!「みんなで幸せになろう!」